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■オランダ格闘技修行
1999年9月11日から23日まで2週間にわたりオランダ、アムステルダムにキック視察及び練習に行きました。 K−1選手のインタビュー以外は雑誌などではあまり紹介されることのないオランダの格闘技事情やジムについてやる側からのレポ―トしたい思います。
なぜオランダのキックは強いのか?
  現在キックでは世界最高レベルの規模にあるといわれているK-1において過去、その優勝者は第1回のブランコ・シカテックを始めとしてピータアーツやアーネストホーストらオランダ人がキングの座を占められている。正確にはブランコ・シカテックはクロアチア人ですがオランダのチャクリキジム所属です。現在99年までは唯一の例外はアンデイ・フグのみです。

 K-1ファイター以前の80年代後半から90年代初頭には"帝王"ことロブ・カーマン地獄の風車ラモンデッカーらのダッチファイターが欧州、そして本場タイでもその実力を知らしめている。カーマンは”巨象”チャンプアやラクチャートらのタイ人と激闘を繰り広げ、デッカーはまだライト級でオランダ人初のムエタイランカーとしてコバーンらと闘い王者に限りなく近きました。残念ながらタイトルは取れませんでしたが。

 なぜ、オランダのキックが強いのか、その練習方法は、日本のキックとどう違うのか、いくつかの疑問があり、オランダ行きを決めました。同年(1999年)の7月からゴールドジムでのスク―ルもスタートし、いい技術を取り入れたい(これは空手維新設立時からの方針)という指導者としての一面、そして自分の技術が果たして、ここ、オランダで通じるのか、個人(選手)としての自分の評価を知りたいという動機がありました。

 10年前、初めて、フルコン空手からグローブに、顔面ありに取り組む時にも、どうせやるならと、本場タイに2ヶ月の修行に行きました。まず見て、そしてやってみようという簡単な動機です。まさか30歳を過ぎ、同じような理由でオランダまで来るとは思いもしませんでした。ただ、強くなりたいという気持ちだけは変わらず持ち続けていたつもりです。(自分が実際に強いとは思いませんが、強かったら空手を辞めていたと思います。)確かに、プロのキックボクサーではなく、強くなるためにわざわざオランダまで行くアマチュア空手家も珍しいと思いますが。

 インターネットの掲示板で格通オランダ特派員の遠藤さんと知り合え、目白ジムとボスジムの住所を教えていただきました。これを頼りに(本当に助かりました。)2週間ばかりの、修行というには短い期間ですが僕のオランダでのキック修行は始まりました。(遠藤さん、有難うございました。)
”帝王” ロブ・カーマンとジムにて オランダの名門ジム メジロジム
 オランダのキックジムといえば、ボスジム(アーネストホースト、イワンヒポリットが所属)、チャクリキジム(トムハーリックが創立、ピーターアーツを育てたジム、初代K1王者ブランコシカテックもこのジム)そしてオランダで初めてのキックジムがこのメジロジムです。

 アンドレマナートが現会長、あのロブカ―マンもこのジム(現在はチャクリキから移籍したピータ-アーツも所属)などが日本で有名です。今回はメジロジム(練習のメイン)とボスジムで練習をしました。


 99年10月に引退試合を目前にしたあのカーマンが現役最後の練習中でした。幸運にもカーマンと一緒に練習することができ、元祖対角線コンビネーションに感激しました。実際は一緒に練習したというより、横でカーマンの真似をしていた様なものです。  カーマンさんとは、練習の前後にお話させて頂きましたが、普段の口調や素振りは帝王というよりジェントルマンでした。BMWで颯爽とジムに来ますが、少し遅刻してくるので早く練習しなければと慌ただしくトランクスに着替える姿が印象に残っています。練習も物凄く真面目で真剣でした。カーマンは遅刻してきた時は、合同練習の後に必ず、その倍以上の時間の練習をしていました。この姿に僕は感銘を受け、やはりプロとして長く現役を続けられたのはこういう努力の積みかさねなのでしょう。

 メジロジムでは夜の合同トレーニングが、週3回、この他に2回、昼間にプロのコースがあります。日本では合同で練習するキックジムは多くありませんが、ここでは、合同の練習がメインとなっているところがほとんどです。練習時間は約一時間しかありませんが、密度の濃い練習が集中して行われます。これはプロの練習でも同じで、あのピーターアーツでさえ、通常の練習は一時間足らずでした。

 また、面白いことに曜日ごとに、練習の内容、テーマが異なり、月曜日は、心拍数をメインにしたサーキットトレーニング、腿上げダッシュをメインに、この間に、腕立て、腹筋、スクワットが入ります。これを約30分強行い、サンドバックでコンビネーションを行います。勿論、オランダコンビネーション、対角線の攻撃がメインです。左ジャブから右ローキック、右ストレートから左ロ−キックなど、基本を大切にした練習でした。

 水曜日は主に、構えてから、基本的なパンチのコンビネーションの練習、対人でのデイフェンスの練習です。デイフェンスをきちんと学び実戦することにより恐怖心をなくし、顔面という怖さを取り除いて行きます。技を限定することにより、一つ、一つのガードを身につけます。例えば、攻撃側は、右ストレートのみ、防御側はこデイフェンスれをガードする。次に左か、右のストレート、そしてフックと攻撃の幅を広げて行きます。

 そして、金曜日は水曜日の練習にプラスして、二人組みとなり、パンチから蹴りへとより高度なコンビネショ―ンを交互に行います。対人となることで、より実戦に近い練習となり、厚手のスネサポーターを使用することにより、攻撃する側も強く蹴れ、防御側も試合に近い攻防となります。これがスタミナ面にもプラスとなります。オランダで販売、使用されているシン(スネ)ガードは厚くてもかさばらず、それでいて衝撃吸収率が高く、相手を強くけることができ、これが想像以上にスタミナ育成に役立ちました。日本で一般に使用されているサポータタイプだとどうしても薄く、蹴る方も受ける方も痛く、加減せざるを得ません。

 オランダのジムの特色として、合同での練習、型や理念より、実戦を想定した練習が挙げられ、合理性、実戦性が重視されているのを感じました。これはオランダ人の特質ではないのかと思います。

オランダ格闘技修行 メジロジム プロコース編
オランダ格闘技修行 メジロジム01  プロコースになるとそれぞれが自主的に練習をこなして行きます。アンドレ・マナート会長は全体の練習のメニューを指示するとともに試合の近い選手をメインに見て行きます。
  まず、シャドーや柔軟で身体を温める。これも一般コースとは異なり、合同ではなく、各自のペースで調整します。日によって異なりますが、ミット練習の場合、体格のあう者同士で二人組になります。興味深いのはある程度ペアが決まっており、慣れたパートナー同士のためお互いの技の特徴を理解しており、お互いに技をだし易いと思います。
 攻撃側はマナート会長に指定されたコンビネーションをミットに叩き込みます。例えば、最初はパンチで1、2ストレート、次は、1、2からフックなど指示通りのコンビネーションをミットに繰り出します。これはフリーミットというよりは全員が同じコンビネーションを行う合同ミット式、或いは基本のミット練習とでもいうべきものです。そしてパンチミットではなく、キックミットにパンチを繰り出すため、一つ、一つのパンチがこの練習により重くなります。(勿論、後半には通常のフリーミットも行います。)

試合の近い選手は後半にトレーナの指示通りに技をだすのフリースタイルのミット練習を行います。  
メジロジムにはミットとサンドバックが練習する人数分(正確には一方がミットを持つので半分の数)あります。日本、東京あたりの道場からみると信じられない環境ですが、そのかわりにメジロジムにはウエイトのトレーニング器具はありません。サンドバックを合同で蹴る練習はおそらく東京では不可能でしょう。  
メジロジムの特徴は、ストレート系の攻撃と右のローキックがメインでまさに元祖対角線コンビネーションです。基本の動きを大切にしている印象を受けました。ストレートを力強く打つことを注意されました。このジムのサンドバックの硬く重いこと、これで真面目に蹴っていれば、(コブシやスネを傷めたり、壊さなければ)重い打撃が習得できるでしょう。

 インターネットの掲示板で格通オランダ特派員の遠藤さんと知り合え、 メジロジムボスジムの住所を教えていただきました。これを頼りに(本当に助かりました。)2週間ばかりの、修行というには短い期間ですが僕のオランダでのキック修行は始まりました。(遠藤さん、有難うございました。)

メジロ式ローキック
オランダ格闘技修行 メジロ式ローキック
 もう一つ技術的に興味を引いたのは、ローキックの蹴り方でした。今まで、横から振りまわす感じでローを蹴っていましたが、マナート会長にそれはダメだと注意されました。メジロ式のローキックは、軸足のかかとを上げ、身体を開き気味に、ローキックを正面、上から振り落とす感じで蹴ります。当てる位置は腿の横ではなく、相手のヒザを上部を蹴ります。

 マニアの方はぜひ、昔のリアルファィテングを見てください。そうです。納得していただけしょうか、余談ですが、キックをやっているという話をすると必ず、僕もキック好きなんですと調子を合わせる人がいます。誰が好きなのと聞くことで、その人のキックへの関わり方がある程度は分かります。最近は99%、K‐1選手の名を上げます。この時点でその人はキックファンというジャンルからK-1ファンに振り分けられます。(あくまでも僕の頭の中でです。)時々、島さんが好きでと渋いことを答られると仲間意識が沸きます。(古いですね。)きっと意味の分らない人が多いと思いますが、カーマンを知っている人はキックファンだと言う事です。(意味不明ですみません。)
 ただこの蹴り方は基本的に前足に体重をきちんと乗せてかまえる重量級の選手には蹴り易いのですが、比較的前足に体重をかけず、ヒザガードする軽量級の選手には蹴りにくく当たりにくくなります。勿論、試合でのカーマンはラウンドごとに、相手のダメージによってローキックの角度を変えています。最終的に相手の腿にダメージが溜まり、ヒザガードの反応が遅れだすと、この上から下に振り落とすローキックを出します。

 ミット練習を終えると今度はフリーのスパーリングとなります。スネサポーターと厚いグローブを装備し体格の合うもの同士でスパーリングを始めます。スネを完全装備することにより、強い打撃が打てこれにより、スタミナがつきます。空手のように薄いサポーターでスパーリングをすると実戦には近くてもダメージが出てしまうため、回数をこなせなくなるからです。逆にライトのスパーで相手に軽く当てると、テクニックの習得にはいいのですが、実際の試合からは遠い感覚になってしまいます。よく目につくのが、友達同士で薄いグローブでスパーをしていると軽く相手に当て、一発で止める癖が自然につきます。比較的技術のある選手にこれは多いのですが、実際には人は一発では倒れません。ましてや、キックや空手の試合では互いに興奮状態にあり、ある程度の技量の差がなければ、一撃必殺はありえません。

 これはキックボクシングが、攻撃対象とする相手をキックボクサーと仮定しているからです。だからこそ、一打では倒れないからこそコンビネーションが重要となります。

 僕自身、海外で指導をした時などに、外人からこういう質問を受けます。空手(キック)と合気道は同じなのか?なぜ、キックは一発では倒れず何発もパンチを打っても倒れないのに、合気道は一掴みで相手が吹っ飛ぶのか?と、やはり、合気道の方が、人がバーツと倒したりして強い印象があるのだと思います。これは対象相手の違いにあります。合気道は相手が格闘技を知らず、自分と同体格の場合のみ通用します。

 合気道は護身術だから競技や倒しあいではないといいますが、この日本でも恐喝やケンカざたになる場合、自分に非がなく相手からツツかかってきた場合、100%相手はケンカ慣れしていて、格闘技を習得していなくても、人を殴る技術がある程度はあります。こんな相手には合気道は通用しません。空手やキックも絶対ではありません。しかし、練習でのスパーリングや試合などで緊張状態を体験する事により、ある程度のシュミレーションがする事が出来、ある程度の対応は可能だと思います。100%通用するかは、個人の考え方や意識の問題があり絶対ではありません。

 キックやグローブ空手などある程度のコンタクトスポーツでは、試合に勝つためには、簡単に言えば、練習での動きと実際の試合をいかに同レベルに持っていくかが問題になります。これにはこの厚いサポーターでのオランダ式のスパーリングは有効だと思われます。シャドーの動きと実際の試合での動きに誤差が無いほど正しい練習をしていると言えます。

オランダ格闘技修行 ピーター・アーツと
 ピーター・アーツも手には16‐18オンスぐらいの馬鹿でかいグローブを、スネには普通のスネガードを2、3枚重ねてスパーに入ります。極真の城南支部にガンダムという練習方法がありますが、これに近い感じだと思います。

 このメジロジムでのスパーリングはまさにK−1でした。アーツ対ロブ・カーマンの夢のカードも実現です。カーマンの対角線コンビネーションとアーツのまるで機関車のような重量級のストレートが激突です。
カーマンは全盛期に比べると身体はある程度動いても、反射神経や反応力が落ちている気がしました。これは恐らく年齢からくるものだと思います。例えば、20代では0.005秒で反応していたのが、今は0.01秒、認識する時間がかかる分、対応や反応が遅れてしまいます。このため、自分の頭の中ではパンチをガードできても、実際には当たってしまうという現象が起きます。ボクシングの辰吉丈一郎選手もこれと同じ現象が起きていると思います。

 もう一つ面白かったのは、首相撲に練習です。スパーをしていて指導者の合図と共に首相撲に入り、互いにヒザをだし、首を取り合います。体力がバテ始める後半に首相撲の攻防はスタミナをつけるには有効な練習となります。首相撲はウエイトが軽くなればなるほど、首相撲でヒザの攻防が多くなり、ヒザの数が多くなり、重くなると、ヘビー級になると限りなくクリンチに近い首相撲になります。これは恐らく骨格的な問題ではないでしょうか。やはり同じ人間で、同じキックボクシングでも100kgの選手と60Kgの選手に技術体系が異なるということです。マナート会長は同じミットを持っていても、やはりコンビネーションや蹴り方などを分けているように感じられました。軽い選手はよりは早く動き、重量級の選手はより重い打撃を、それぞれのポイントが異なるように見えました。確かに、日本では大きなキックジムでも100kgの選手は多くても3−5人でしょう。やはりK-1で勝つには、重量級の技術をまず、指導者が覚えなければならないですね。

 余談ですが、ピーターアーツは、TVの印象そのままの明るくて豪快な選手でした。最初にジムに行った時、僕はカーマンに会い感動していたのをピータアーツは”なぜ、俺じゃないんだ?”と不思議そうな顔で僕を見てました。若い日本人なら殆どが、アーツを知ってますし、実際スターですからね。でも、僕は、やっぱりカーマンなんですね。

 カーマンは、10月の引退試合を勝利で飾り、今後、ロスで俳優業をメインにアメリカで活躍していく言ってました。そのうち、日本でもカーマンの映画が公開されるかも知れませんね。そういえば、僕はカーマンと一緒に練習した最後の日本人になってしまいました。(少し自慢)ただ心残りがあるとすれば、Fさんに頼まれた”カーマンのトランクス”をドサクサにまぎれて持ってきてくださいという指令だけかもしれません。真面目な話、カーマンに頼めばよかったなと今でも少し後悔しています。男気のあるカーマンなら、いくらでも持っていきな!とレインボーのトランクスを山ほどくれたかも知れません。でも銀行のマークの入ったジェラルミンのケースだけは勘弁してほしいですね。(分かる人だけ笑ってください。)

次はオランダ、ボスジム編の予定です。
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