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■第2回 オランダ修行編 ボスジム ミスターパーフェクトを目指して
今回のオランダ修行では(注意 ハッキリいって修行と名乗るには恥ずかしいのですが、オランダ旅行記だとちょっと情けないのでとりあえず修行とさせてください。)メジロジムでは元祖対角線攻撃のオランダコンビネーションを学び、ボスジムでは、アーネスト・ホーストに代表され華麗なるコンビネーションテクニックの習得に励みました。オランダ初のキックボクシングジムメジロジムから発生したのがこのボスジムなので言うなれば兄弟ジムのような関係です。基本のコンビネーションは同じでも、メジロジムは、どちらかというとそれぞれの攻撃の強化を重視し、一方、ボスジムは更なるコンビネーションのバリエーションに進化していった様に感じました。
  どちらかのジムが優れているというのではなく、まず自分がどちらのジムに向いているのかが大切だと思います。これは日本のジムでも同様で、それぞれにそのジムの特徴があります。ムエタイスタイルやローとパンチをメイン攻撃するジムなどそれぞれです。

 試合などで、ジムの選手を見れば大まかな特徴は掴めると思います。ただどのジムにも例外的な選手がいて、いくら矯正しても結局、同じ動き、もともとの動きに戻ってしまう人もいます。これが型だけの試合なら、問題となるのですが、キック等の打撃格闘技、実際に当て合う競技では自分の動きで勝つしまうケースも多々あります。これが格闘技の理不尽で、それゆえ面白い点えはないでしょうか。勿論、良い例もあれば、悪い例もあります。

 これは維新でも例外ではなく、公表すると井上浩さんにあたります。井上さんの動きは独特で部分部分で維新らしい攻撃もありますが、やはり井上さんの動きになります。

 簡単なことなのですが、ジムの会長やトレーナ―の理想的なイメージと実際の選手の理想と一致することが重要です。これは簡単なことのように思われますが、一番難しい困難なことです。僕もプロの選手やアマで試合をする選手のセコンドをするようになりこの事を実感させられました。

 例えば、T君の場合、まず基本的な構えやオーソドックスな攻撃をきちんと習得し、その上で本人の持っている特徴(T君の場合はパンチや派手な変則的な攻撃)を活かさなくてはなりません。 変則的な攻撃を生かすにはそれだけではなく、基本的な攻撃ができなければ変則的な攻撃は生きません。練習では動いても、実際の試合では、なぜか当たらないドロップキックをしたり胴回し蹴りを連発します。こうなると互いの理想はまったく異なるので、いくらアドバイスしても何ラウンドミットも持っても何のプラスにもなりません。指導というものは難しいと実感させられます。今回は日本からのきたので特例として両方のジムで練習させてもらいましたが、基本には幾つかのジムで同時に練習することは良いことではありません。やはりそれぞれのジムによって考え方が違い指導方法が異なるからです。勿論ある程度の経験があればいろいろなジムで練習することはプラスになると思います。

 中国拳法にはこの意味の言葉とし、これを守・破・離と表しています。説明しますと、まずは師匠や先生の動きを忠実に守る期間である守、次にきちんと師匠の動きを守り理解した上で一度、自分の動作を壊します。これが破です。そして最終的には師匠の動きを離れ、新たなる自分のスタイル、自分の動きや形を形成します。そしてようやく1人前となります。

 やはり空手道として道をまっとうするには少なくとも10年はかかると思います。だからこそ一度維、手を始めたらとりあえずそこで3年は頑張って欲しいと思います。正直にいっていろんな所を渡り歩いているとやはりある程度で終わってしまいます。

”元祖 パーフェクト”イワン・ヒポリット
空手維新の夏合宿  さて、ボスジムではK-1で活躍するアーネスト・ホーストが有名ですが、ここの現在の会長はあの"元祖パーフェクト"イワン・ヒポリットです。ヒポリットは94年のK-1で初来日しSBのエースだった吉鷹選手とワンマッチで激闘は繰り広げました。当時から、中量級世界最強の呼び名も高く、現実の試合も完璧としかいえない素晴らしい動きでした。重低音のボデイブローで一発で会場を沸かせ、一つ一つの動きやコンビネーションが完璧としかいいようがありません。この試合は僕が感銘を受けた試合の一つで今でもよくヒポリットの攻撃を真似します。ヒポリットの凄さは、"タイの巨象"チャンプアを左フックでKOした破壊力、そして何よりもタイでタイ人と試合しテクニックで相手を圧倒できることです。タイでタイ人をKOすることはできてもあの独特の判定できちんと勝つことのできる外人選手はごくわずかです。あのラモンデッカー全盛期でさえ勝つときはKO勝ち、判定になると大差の判定負けで勝てません。ヒポリットはそれ程凄い選手であり僕の憧れの選手でもあります。
 ボスジムに入り、まず目にしたのはヒポリットのスパーリングでした。ちょうど10月のロブカーマンの引退式でライアンシムソンとの試合を控え猛練習の最中でした。相手がフリーコンビネーションで攻めてくるのをブロックし、ヒポリットがカウンターや受け返しで攻撃します。きちんとガードをして返す練習でした。以前にネットであのシュートボクシングの吉鷹さんに練習方法をアドバイスをして頂いたのですが、オフェンス(攻撃)の練習は自分自身でするのでデフェンス(防御)を意識して練習されたと教えてくれました。 いやもう凄い迫力で相手の攻撃を受けてこれまた凄い迫力で攻撃を返します。これだけで充分にオランダに来た価値がありました。同時期にちょうどアーネスト・ホーストもK-1グランプリを目前に控えのトレーニング中でしたので、こちらも遠藤さんのおかげで練習を見ることができました。

さて本題のボスジムの練習ですが、メジロジム同様に、ファイターコースとベーシックコースに分かれています。 練習は軽いランニングで始まります。走りながら先生であるヒポリットの合図に合わせて、ジャンプしたり、座ったりします。身体がある程度温まるとイチ、ニ、サンと日本語の号令で前蹴り、回し蹴りを連打します。空手の様なカチ、カチした動きではなくリズミカルにスピードで蹴ります。

シャドーコンビネ−ション
そして柔軟と補強に入ります。補強は曜日により異なり、腹筋、腕立て、スクワット等をこなし。基本のシャドーです。鏡の前に整列しヒポリットの指示するコンビネ−ションを反復します。
例えば、
1 1、2ストレート
2 1、2ストレート、右ストレート
3 1、2ストレート、右ストレート、左フック、
4 1、2ストレート、右ストレート、左フック、右ストレートから左ミドル
5 1、2ストレート、右ストレート、左フック、右ストレートから左ミドルから右ストレート
 1から5の様にコンビネーションが付け足されどんどん複雑になっていきます。 メジロジムは比較的基本的なコンビネーションの一つ一つの技に強弱をかけていますが、ボスジムはコンビネーション自体にメリハリがあります。

 物凄く簡単に文章化すると、KOされた選手が、右ストレートやローキックの特定された技で倒されたなら、メジロ式のコンビネーション。パンチが効いて、ローも効いて気が付くと倒されてしまったな、というのがボス式です。勿論、これは総論ではなく、あくまでも僕自身がそれぞれのジムで体験、考察した基本的な攻撃方法に過ぎません。どちらのジムが優れているという問題ではなく、その選手がどちらの方法論に向いているかという問題だと思います。

フルコンルールのスパーリング
全員がグローブとスネサポータを装備して、いよいよ対人の練習に入ります。 オランダの練習で有効的だと感じた練習方法として所謂、フルコンルールのスパーリングがあります。これはグローブ着用の上で顔面ナシでボデイを打ち合います。これによりボデイが打たれ強くなり、攻撃面のメリットはボデイブローがうまく打てる様になります。グローブが大ききため怪我もなく連打で攻めることによりスタミナがつきます。そして初心者には一番大切な前に出る勇気が育成されます。大道塾ではありませんが、やはり体力をつける上でもフルコンをある程度経験しておくことはプラスだと思います。体力という点ではフルコンがキックを上回っていると感じます。
僕自身はもともとフルコンもやっていたので(はっきり言って凄く弱いのですが)このスパーはそれほど苦手ではなかったのですが、日本のキックボクサーがボスジムで大変だったのはこのフルコン式スパーだと聞きます。スパーの相手も人により、思いっきり打ってきたりして、気が抜くと倒されてしまいます。

ヒポリット式コンビネーショントレーニング

フルコン式スパーリングを数ラウンドこなすといよいよコンビネーションの練習に入ります。 体格のあった者がペアになり、ヒポリット先生の指示するコンビネーションを行います。日によって異なるコンビネーションを練習します。
1 相手の左ジャブを捌いて(パーリング)して相手の左の内股に左のローキックを蹴ります。
2  相手の左ジャブを捌いて(パーリング)して相手の左の内股に左のローキック、そして左ミドルキック
3  相手の左ジャブを捌いて(パーリング)して相手の左の内股に左のローキック、そして左ミドルキックそして右ストレート あるいは
1 相手の左ジャブに左の前蹴りをあわせる。
2 相手の左ジャブに左の前蹴り合わせて右ミドル、そして左ジャブ、右ローキックまで続けて蹴る。

空手維新の夏合宿  上記の様にしだいにコンビネーションが複雑になっていきます。そして練習を重ねるうちに自然と試合でも複雑なコンビネーションが可能になります。無意識でもできる技がその選手の本当の技だと思います。 こういう対人式の練習で一番大切な事は、良いパートナーと練習することですあり、うまくなるコツは上手いパートナーの技を盗むことです。例えば、ローキックはどこを蹴っているか、どこを蹴られると痛いのか、正確に把握し相手の技を真似することにより技術は向上します。どんな練習でも常に考える事が大切です。
 練習は、スパーリングへと入ります。強く攻撃してくる人やデカイ人、女性、少年と,まさにランダムにスパーリングとなります。(但し、プロのファイターコースはキックの試合を対象としているため同じ体格の相手と戦います。)

以上が大まかなボスジムの練習でプロの選手の練習は、基礎的なコンビネーションの変わりにミットトレーニングとフリーのスパーリングが多くなります。

オランダ修行は2週間弱の短い期間でしたが、ボスジムではベーシックコースから練習を始め、最終日には、なんとかファイターコース、プロコースに上げてもらう事ができました。ゼロの一練習生から始めてコネもなく実力で勝ち得た、ボスジムでのファイターとしての評価は僕にとって一生の宝物だと思います。そして今まで自分が考え、実戦してきたことは間違いではなかったと思い少しほっとしました。(笑)

オランダでの練習を振返ると、本当に学ぶべきことが多く、とても楽しかったというのが感想です。日本とオランダのキック事情は比較的類似している環境にあり、他のメジャースポーツと比べ、恵まれてはいません。近年は、K-1の出現により環境は日本の方が優れているのではないでしょうか。オランダの選手は厳しい環境でも重量級の選手はK-1を目指し、中量級はフランスやヨーロッパでトップを、軽量級の選手は本場タイで最強を目指しています。格闘技が好きな者同士が人種や国境を超えて一緒に練習できるのは素晴らしいことだと思います。 僕自身は一選手として、まったく新しい環境で、ゼロからオランダで練習できた事は、素晴らしい経験であり、一人で過ごすアムステルダムの夜は、初めてタイに行った頃のハングリーさを思い出させてくれました。今よりも強くなりたくて、海を越え、異国で過ごした日々は、大いなる不安とそれ以上の希望を僕に与えてくれました。そして30になり、僕はまったく同じ気持ちをオランダで得ることができました。それだけでも十分にここ、オランダに来た価値があったと思います。これからもずっと自分なりの最強を目指していきたいと思います。

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