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■第4回 ムエタイとは何か?
 もし、空手が打撃格闘技として、最強を追求するならば、決して無視することができない格闘技が存在する。それはタイの国技でもあるムエタイである。一般的に一部のプロのキックボクサーを除けば、試合レポートや大まかな情報はあるが、真実のムエタイや現在のあり方についてきちんとバックグランドまで踏み込んだ記事は少ないと思う。

 この記事はバウトレビューというインターネットマガジンでムエタイについての執筆したものである。自我自賛かもしれないが、ムエタイとは何か、真実のムエタイについて最良最適のガイドではないかと思い、ここに掲載したい。

 前回の「タイ、タイ、タイ」が実技をメインとしコラムとすれば、この真実のムエタイはムエタイについての入門編といえるだろう。そして次回は、いよいよ、僕自身のムエタイ挑戦編「ムエタイチャレンジ」としたいと構想を練っている。2度にわたるタイでのムエタイでの試合について、実際の作戦、練習方法、試合の心理状態まで記したい。これらのコラムをして山口龍ムエタイ三部作としたいと思うしだいである。

注 今回は少し偉そうですが、文豪風に書いただけで深い意味はありません。すみません。ちなみに写真も僕が撮影しました。

2001年1月16日会社のパソコンにて仕事中 山口龍
ムエタイとは何か、真実のムエタイとは、
ムエタイとは何か?  タイの国技でもあるタイ式キックボクシング、ムエタイは世界中のキックボクサーにとって永遠に変わることのない最強の存在である。

 近年、ムエタイ、あるいはキックボクシングの世界的普及によりミドル級以上のクラスではヨーロッパなどの選手の活躍も目に付くが、ウエルター以下では今だムエタイ選手の牙城が崩されることはほとんど無い。これはタイ人の体格的問題のためであり、平均的身長、体重が欧米人に比べ小さい為、ムエタイではライト級以下の層が充実しており、選手層が一番厚いクラスはフライ、バンダム、フェザー級の軽量級である。  これに対して最重量階級であるヘビー級は日本のK-1の出現によりK-1グランプリが規模やスケール、そしてファイトマネーとその頂点に位置していると言えるであろう。現時点においてはそのタイトルはオランダ人を始めヨーロッパ選手がが最強の座を獲得しているただし将来的にはF-1のように多国籍化してくると思われる。(正確にはムエタイとキックボクシングは別の競技であるが、ここでは便宜上統一する。)
  ミドルからウエルターの中量級も同様にフランスとオランダをメインとするヨーロッパのファイターが強い。それぞれの傾向としてはフランスはヒジやヒザ蹴りを重視するムエタイスタイルにあり、オランダはボクシングテクニックに特徴がある。試合形式においてはフランスはヒジあり、首相撲ありのムエタイスタイルであり、一方オランダは日本のキックボクシングスタイルを取り入れたため、比較的ブレイクが早く、首相撲より打撃に対するダメージを重視し、ヒジも禁止されている。

 軽量級においては、やはりムエタイ、タイの選手が最強である。言うまでも無く日本のキックボクサーは主にバンダム、フェザー、ライト級がメインである。この階級においてはムエタイ最強伝説は崩されることはない。これまで日本やオランダ、イギリス、フランス、アメリカなど世界中のキックボクサーが打倒ムエタイを野望にタイに挑むも、殆どはムエタイの前に敗れ去っている。例外としては、タイトルを獲得できたのはルンピニーではウエルター級のフランスのムラッド・サリ、ラジャではライト級は日本の藤原敏男2人のみである。(2000年には新日本キックの小笠原選手もタイトル奪取!)ただしタイトルの防衛に成功した外国人ファイターはまだいない。

なぜ、ムエタイは強いのだろうか、
ムラッド・サリ選手。  日本で生まれたキックボクシングは今や世界に進出し、重量級はK-1という名で世界に浸透しつつある。日本のキックボクサーが目指すのは、ムエタイを超えることである。真の強さを求める者にとってムエタイは避けること無視する事のできない存在である。ムエタイは戦いの芸術といわれ、打つ、蹴る、ヒジ、ヒザを用いて打撃格闘技で最も合理的であり、強いと実証されている。ムエタイの凄さは何よりもその選手層が厚さにあると言えるであろう。

 タイの国技であるムエタイには二大会場である王室系のラジャダムヌーンスタジアムと陸軍系のルンピニースタジアムがあり、それぞれがクラスごとの王者を認定している。格の上ではラジャダムヌーンが上であるといわれてきたが、選手の強さはルンピニーと言われている。一般的にラジャのファイターはテクニシャンが多く、ルンピ二―ではファイターが好まれる傾向にある。これはそれぞれのジャッジの傾向でもある。実際にラジャとルンピニーとの交流戦においてはルンピニー系選手が勝つケースが多い。写真はタイトル奪取した際のムラッド・サリ選手。
 ラジャやルンピニーはボクシングのWBAとWBCのようなものかと思われるかもしれないが、これがまったく異なる存在なのでややこしいのである。これらのスタジアムはそれぞれがプロモーターごとに興行を開催する。ムエタイジムがどのプロモーターに属しているかということになる。興行氏が選手を抱えて、興行を組んでいるのである。日本でも有名なソンチャィ氏はルンピニーに属して、勿論、ナンバー1といわれるほどいい選手をそのグループに揃えている。(2001年にはラジャに移動するらしい。)

以前に、勿論今でもムエタイの世界的な権威としてWBCやWBAにあたる統一機構を造ろうとしているが、(これはあくまでも強さを基準としたランキングの決定機関)IMFやWMTCがこれにあたるのだが、利権争いやギャンブルの対象にならないので、うまく機構してはいない。

 それぞれのスタジアムの収容人数は約一万、殆ど毎日どちらかのスタジアムで試合が開催される。試合は通常12試合前後でメインが7-8試合目にあたる。前座と後座とでも言うのだろうか、。

ムエタイの観戦方法
ムエタイ試合  タイで実際に試合を見た日本人からはムエタイは面白くないという感想をよく聞く、これはボクシングの様に倒しあいを期待してムエタイを見ているからであり、互いに倒し合わず、一見、たらたらとやっているよう(に見える)試合は面白くはないのは当然である。

 断言しようムエタイは倒しあいではなく、完全にポイントの取り合い、守り合いなのである。しかしこの裏には勿論最強となる強さも隠されている。これは後に書こう。
 このためラウンドのインターバルも長く、これも先週を休ませるためでなく賭けをする時間なのである。こういった理由から僅差で優劣が代わる試合がギャンブラーにとって面白い試合となるだからチャンピオンになる選手はめちゃくちゃ強い選手でなくわずか数ポイントで勝てる選手が名選手といわれる。ポイントはミドル以上のキック、ヒザ蹴りや首相撲のポイントも良い、首相撲や攻防の上で相手は倒すとポイントが高い。逆にパンチの評価は低く、KO以外のダメージはほとんど判定されない。

 ムエタイでタイトルを獲得するには、実力は当然のことで、力のあるジムに所属し、タイトルマッチを組めるプロモーターのグループに入っていなければならない。また強すぎてもギャンブルとして試合が成立しないので王座を獲得することはできない。アメリカのボクシングでは胴元のいるオッズスタイル賭けなので強いチャンピオンの試合は成立するが、ムエタイでは基本的に一方的な試合は成りたたないのである。例として"天を突く膝蹴りの名手"ディーゼルノイが有名である。あまりにも強すぎるため、相手がなく、勿論試合もなく自然に引退状態になってしまった。サマートもこれに近い。

 だからこそラジャやルンピニーでタイトルを取ることは非常に困難なことであり、一般的に想像されている様に強ければいいだけの問題ではないと断言できる。勿論、強さは必須であるが、それだけではだめなのである。近年はタイトルマッチを組めるプロモーターの力が大きい。だからこそ、ムエタイの選手は、二大スタジアムのランカーになれば実力は変わらないとさえいう、トップランカーになり、タイトルを取れないのは、運という非常に曖昧なものの差であるとも言える。だからこそ、強いのである。  ここでいう強さは、二種類有り、タイの強さは、実力的なものに加え、テクニックが上げられる。紙一重の試合を制するテクニックがなければ,王座にはつけない。代表的な選手は古くはチャモアペット、アタチャイなどがこれにあたる。上記の写真のブルーのトランクスの選手はアタチャイです。

 一方、強い選手、例えば日本人無敗のランバー等はランクインはできても王座獲得はできない。一般的に日本人観客が見て面白く人気のあるのは間違いなく後者の強い選手のタイプである。日本をメインに活躍するグラナガーン等のタイ人選手もこういう強い選手だ。

 一方、タイでは強いのは勿論だが、相手が強くてもこれをかわすことができ、ある程度手堅く勝つ選手がいい選手だとされる。  疑問は、日本人選手を軸に考えれば、分かりやすい。前田選手や立嶋選手がある程度、良い試合内容で9冠王チャモアペットに判定負けするのに、名もないタイ人選手にKO負けするのは、手堅く勝つというムエタイ的な戦略があるからである。前記のようなムエタイの試合成立の有り方を考えてもらえば分かりやすいのではないかと思う。

 打倒ムエタイを目指す多くの日本の戦士達に、90年代ムエタイを震撼させた男、帝王ロブ・カーマンの言葉を送りたい。この言葉の中に打倒ムエタイを果たす大きなヒントがあると思えるからだ。
ロブ・カーマン選手 「 私達、ヨーロッパ人は比較的大きな失敗はしない。なぜならば考え方が合理的であり、自分のスタイルにムエタイをプラスするからである。キックの技術は学ぶ点が多くひざ蹴りは素晴らしいと思うけど、パンチは私達のほうが強くてうまいと思っている。 」                                                                                   
"帝王"ロブ・カーマン オランダ・メジロジム 1999年 引退 
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